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そば好きノ日々

福井自慢の越前そばに恋し恋され魅力溢れる地元の文化を次世代に継承していく!


“蕎麦”に携わる人々の想いを紡いでいく、【そば色ノ日々】。今回は、福井県自慢の越前そばに心の底から恋し、お蕎麦自体の魅力のみではなく、福井のお蕎麦にまつわる文化を次の世代に継承していこうと活動をされている、奥村さんをご紹介させていただきます。

プロフィール
<奥村慎爾(しんじ)さんの略歴>
昭和53年(1978年)大阪府生まれ。小学生の頃から父親の地元である福井で育つ。高校卒業後はグラフィックデザイン会社にてキャリアを積まれたのちに独立。現在はデザインやコンサル業をライスワークにしながら、福井の魅力ある越前そばとその文化についての発信をライフワークとして力を入れて活動中。

──奥村さん本日はお忙しいなかにも関わらず、こうしてインタビューのお時間をいただきましてありがとうございます。普段からインスタグラムでも毎日越前そばを食べて発信されているのを拝見していて、ぜひお話をお聞きしたいと思っていました。本日はよろしくお願いします。

こちらこそ、こうして貴重な機会をいただきましてありがとうございます。今回のインタビューを多くの人に読んでもらえることで、福井のお蕎麦の魅力が広まっていくと嬉しく思っています。

──では早速なのですが、奥村さんの略歴について教えて頂けませんでしょうか?

私は元々大阪で生まれたのですが、父の地元の福井に小学校の時に戻ってきて、以降はずっとここ福井の地で育ち、仕事もしています。子供のころは、越前市(旧武生市)や鯖江市で生活をしていましたが、今は大野市でひっそり生活をしています。

高校卒業後は、グラフィックデザインの会社やECサイトをいくつも運営する会社におりましたが、いまは独立してデザインやコンサルのお仕事をさせて貰っています。そうしたライスワークの傍らで、福井のお蕎麦の魅力を発信することをライフワークとしてやっているのですが、最近はお蕎麦関連の方が気持ち的なウェイトが大きくなってきています。笑

福井の蕎麦に初めて関わったのは、2004年にFBC福井放送さんから”そばびと”という、福井県内のお蕎麦に関わる人を紹介するお仕事をいただき、これをきっかけに私の蕎麦との深い付き合いが始まっていくことになりました。

そばびと :https://www.fbc.jp/tv/fukuinosobabito

“そばびと”は2006年に書籍化された後、2021年にも続編といえる書籍“ふくいのそばびと”が発売されたのですが、“そばびと”の取材でお蕎麦屋さんを久しぶりに巡り、多くのご主人のお話を伺っていると、皆さんの真面目さやこだわり、そして蕎麦への熱い想いにめちゃくちゃ感動してしまって、それ以来、お店の方とは違うお客目線での、美味しい福井のお蕎麦をより多くの人に知ってほしい!という思いで、活動をしています。

──福井に2024年に新幹線が通ることもあって、福井のお蕎麦のプロモーションは県外の方への県のプロモーションとしてもとても意義がありそうですね。

その通りです。2021年に携わらせてもらった“そばびと”では、取材を通じて真剣にお蕎麦に向き合うきっかけをいただいた感じで、改めて福井のお蕎麦は本当にすごい!職人の皆さんって本当に“変態”なんじゃないかと思わされました。

でも、その凄さを、当事者の皆さんはあまり気づいていないものなんですよね、

お店自体は単体で宣伝されていたりもしますが、福井県全体の蕎麦をアピールするとなると、行政がメインとなるのですが、どうしても真面目すぎる内容だったり、在来種や石臼の話などマニアックすぎる内容になって、一般の方には難しすぎる気がしたんですよね。だったら食べる側の人の目線で福井のお蕎麦の文化を発信できたら面白いんじゃないかと思うようになったんですね。

そこで、何が出来るかなと考えていた時に、県外の経営者仲間との飲み会の中で、毎日蕎麦生活をしたらいいんじゃないか?という話題になり、勢いでそれを始めて今に至ります。笑

最初は、毎日お昼にお蕎麦を食べるなんてお金もかかるし、個人が毎日そばを食べているだけの投稿にどれだけ意味があるのかわからないじゃないですか。でも普通の人がやらないようなことやった方が楽しいし、むしろだからこそやろうと思い直して、2022年1月からブログとインスタで毎日蕎麦投稿をしています。

──毎日蕎麦生活とても楽しく拝見させていただいています!ちなみに、奥村さんが福井の蕎麦がやばい!と感じるきっかけとなったお蕎麦や体験はありますか?

一つは【谷川】さんですね。(谷川さんのInstagram:@sobagura_tanikawa) 2004年の時の“そばびと”のタイミングでお伺いしたのですが、取材させてもらうまでは麺でお蕎麦しか食べたことがなかったのですが、この時ご主人の勧めで初めて“そばがき”を食べたんですね。その時に、ここまでお蕎麦の野性味溢れる香りがして、甘みも感じられて、本当に衝撃を受けました。以来、どのお蕎麦屋さんでも、そばがきの文字を見ると必ず頼んじゃうほど、ハマるきっかけの一つになりましたね。

──私も何度か谷川さんにお伺いしようとしているのですが、中々毎度タイミングが合わずで。ぜひ、次回福井に行く際には、谷川さんで、そばがきを楽しみたいと思います。ところで、福井育ちの奥村さんですが、小さいころからお蕎麦は身近な存在でしたか?

実は母が関西の出身ということもあって、私自身は幼いころはむしろうどんがメインで育っていました。

ただ、蕎麦が福井県にはとても土着しているのは間違いないですね。ファミリーレストランにいってもお蕎麦を食べていたりしますし、サラリーマンのランチの定番は「ソースカツ丼とおろしそば」ですから、福井県では間違いなくお蕎麦は生活に密着しているものですね。

福井県内にはそば専門店だけでなく、食堂で出されているそばも含めると、200〜300軒ほどお蕎麦を出しているお店があると言われていますが、私は今のところ120軒程を回りましたね。これからも全軒制覇に向けて蕎麦巡りを愉しみますよ!

──120軒も回られていて本当にすごいですね!先ほどの谷川さん以外で、福井に来たら是非ここのお蕎麦を食べてほしい!というお店は有りますか?

沢山あるので、なかなか選ぶのは大変ですが、そうですね、一つは大野市にある【久ちゃん食堂】ですね。十割のお蕎麦なのですが、店主の宮本さんがお母さんから習った蕎麦の打ち方でやっているお店なんですよ。福井では、蕎麦打ちが出来ないとお嫁にいけないと言われていた時代もあったようで、それを地でいく、そんなお店ですね。一本棒で伸して、切る時も駒板を使わない、いわゆる型にはまった蕎麦打ちではなくて、家庭で毎日食べる、そんな優しいお蕎麦を愉しんでいただけると思います。

久ちゃん食堂 食べログ:https://tabelog.com/fukui/A1804/A180402/18008916/

あともう一軒は、坂井市三国町の【たけうち】さんをご紹介したいですね。店構えは雑貨屋さんで、店内も日常品の洗剤やティッシュ、それに靴まで置いてあるお店ですが、店内の奥でお蕎麦を食べられるんですよ!普通だったら別におそば屋さんを構えると思うのですが、雑貨屋さんの店内でおそば屋を始めちゃっても、お客さんが普通に食べに来るぐらい、お蕎麦が大好きな人が福井県内には多い証拠だと思うので、違和感だらけの空間にぜひ立ち寄っていただきたいですね。

たけうち 食べログ:https://tabelog.com/fukui/A1801/A180102/18006818/

そしてやっぱり外せないのは、駅そばの【今庄そば】さんですね。福井県民の人ならわかってくれるのですが、電車で大阪や東京に行くとき、必ず駅そばを食べてから行く人がすごく多いんですよね。そして福井へ帰ってきたら「ただいま〜」といわんばかりに食べちゃうぐらい、県民に愛されているお蕎麦ですね。

今庄そば 食べログ:https://tabelog.com/fukui/A1801/A180101/18007653/

──今庄そばは私も東京に戻る時には新幹線の時間まで最後の一杯を毎回楽しませてもらっています。今庄そばではそういえばおろしそばは出してないですよね?

【今庄そば】さんでおろしをやっていないのは、大根をおろして時間がたつと匂いが出て、美味しくなくなっちゃうからと聞いたことがあります。福井では大根はおろしたてしか使わないですね。

ということで、この記事を読んでいただいている方に、福井に来たらまず愉しんでもらいたいお蕎麦屋さんを強いて言うなら、越前市の【谷川】さん、大野市の【久ちゃん食堂】さん、坂井市三国町の【たけうち】さん、そしてJR福井駅とJR武生駅にある【今庄そば】さんですね。

ご主人のこだわりがつまった福井県産そば粉を粗挽きの十割蕎麦から、生活に密着している家で愉しむようなお蕎麦、福井以外じゃ考えられない違和感だらけの空間で食べるお蕎麦、そして旅立ちと帰省を味覚で感じる駅そばを、ぜひ愉しんでいただけると嬉しいですね。

──奥村さんが考える、福井のお蕎麦の魅力ってどのようなところでしょうか?

一つは多様性ですかね。あまり県外のお蕎麦屋さんを巡ったことがないので、一概に比べられはしないのですが、福井のお蕎麦は一言に“おろしそば”といっても、太い麺から細い面まで様々ですし、かつお節は乗っけていたり乗っけていなかったりですし、ぶっかける王道スタイルや、つゆにつけて食べるスタイルも合ったり、おろしの辛さも違うしと、それぞれのお店での拘りが多種多様にある点がとても楽しいですよね。

この多様性という点があまりPRされていないんじゃないかと日々思っているんですよね。越前おろしそばの宣材写真でよく使われるイメージはあるものの、越前おろしそばという正解がない所こそが福井のそばの魅力ですし、一店一店の世界観が出てくるところが本当に奥深い世界で、多くの方に楽しんでほしいと思いますね。

お蕎麦の味に関しては、他県で食べ歩いているわけではないので、これも一概に比べられはしないのですが、そもそも“おろしそば”って反則だと思っているんです。(笑) 美味しいお蕎麦に、大根おろしが載って、汁をかけたら、そりゃ間違いなく美味しい食べ物になるわけですよ。でも実は、お蕎麦だけで食べてもらったら分かると思うのですが、福井のお蕎麦って本当に香りが立っているし、そばの甘みも生きていて本当に美味しいんですよ!ぜひ福井にいらした際は、おろしそばは勿論食べていただきたいですが、お蕎麦本来の美味しさも感じられるような、もりそばなども一緒に楽しんでもらいたいですね。

あとは、こっちのお蕎麦って一食が少な目なんですよね。それってきっといろんな二軒、三軒とお蕎麦屋さんを巡るというのが文化にあるからだと思うんですよね。

大野市にある【とみたや】さんには、はしご蕎麦が前提だから、並盛も少なく出しているとメニューに書かれていたりするんですよね。なので、蕎麦でお腹いっぱいになりたかったら、大盛、特盛を頼むのが正解です。笑

とみたや 食べログ:https://tabelog.com/fukui/A1804/A180402/18002428/

福井に来た際は、お蕎麦の食べ歩きを愉しんでいただきたいと思います。

──今後取り組んでいきたいこと等があればお聞かせいただけますでしょうか?

お蕎麦の魅力を発信し続けていくことは勿論なのですが、今後は更に“文化”についても発信していきたいと思っています。

先ほども少しお話しましたが、駅そばの【今庄そば】さんで4、50年前に使われていた「氷坂焼(ひさかやき)のそば皿」の存在を、そばに関する一連の情報発信活動を行うなかで初めて知りました。そのお皿は越前市(旧武生市)に以前あった窯元で、現在はもうありません。

その当時、駅そばで使われていたお皿はすべてこの窯元で作られていて、最大で年間12万枚も製造していたと資料にあって、福井県内でも最大級の登り窯をもっていたこともあり、大量生産に対応できたことが、旅行客に対して駅そばの雰囲気をよりに印象強く伝えていたと思うんですよね。それもあって結果的に今庄が蕎麦処として知られることになったので、福井の駅そば文化のいわば「影の立役者」なんですよ!

しかし、そのそば皿は当時「使い捨て」のような扱いだったこともあり、ほとんど残っていません。

現在の北陸トンネルが開通する前、敦賀と武生の中間地点でもある今庄周辺は難所として有名で、峠を超えるために今庄駅で車両の連結などを行うため、約8分程度の停車時間があったそうです。その短い時間の中で乗客たちがそばを食べていたのですが、駅で食べきれない人もでてくるので、当時はお皿のお金を払うと皿ごと買うことができたんです。そばと皿を持ったまま車両の中で揺られながらそばを食べて、食べ終わった後には座席に下へ置いていくといった習慣があって、大量に生産されていながら、現物はほとんど残っていない幻の存在が「氷坂焼のそば皿」なんです。

こういった背景もあり、当時のそば皿の存在はなんとなく知っていても、「氷坂焼」という名前までは知られておらず、廃業されて随分たったこともあり、多くの福井県民はその存在を知らなかったり、すでに忘れさられています。

このお皿に興味を持った私は、現物を見たい思いで色々探していくなかで、奇跡的に運良く当時のお皿を入手することができました。

そして現物を見た瞬間にお皿から感じる「素朴さ」や、現代の洗練された製品にはない「粗さ」という味わいに一目惚れしてしまい、これをなんとか後世に残せないか?という想いに駆り立てられ、福井が誇る伝統産業「越前焼」の組合さんに相談に伺ったところ、ぜひ復活させましょう!というありがたいお返事をいただき、2023年1月から越前焼工業協同組合さんと連携して復活に向けた試作など行い、北陸新幹線が開通する2024年に量産・市販化を目標に向けて活動をしています。

このそば皿のような忘れられてしまいそうな、福井のそば文化をしっかりと次の世代につたえていく活動を今後は更に力入れてやっていきたいと思っています。

ちなみに福井市美山地区の小和清水という地区では、「小和清水石」と呼ばれる、石臼に最適な石が採掘できたそうで、石臼としての産地だったこともあり、福井にある製粉所ではほとんどこの「小和清水石」で作られた石臼を今尚つかわれています。

ただ随分前に最後の石工さんが亡くなられて、小和清水石の石臼は作られなくなり、聞くところによると全国に残っている小和清水の石臼を製粉所さんが探しているなど、石臼へのこだわりはあるものの、石臼に関する情報や歴史について多くの人の記憶から失われつつあることが大変悲しく思います。

こうした背景もあって、ただただお蕎麦屋さんを紹介する、ということではなく、もっと深い文化を紡いでいける書籍であったり、Youtubeを使って発信していくことも今後計画しています。

福井の魅力あふれる、そして生活に密着している蕎麦文化を今後も広く多くの人に知って頂ける活動を続けていきます!

<最後に、奥村さんにとってのそば色は?>

【“金色”、ゴールドですね!】

お蕎麦は、福井の宝だとおもっています!まばゆいばかりの光で、僕たちを魅了しつづけてきてくれているし、今後福井に人が来ていただけるきっかけになるのも、蕎麦だとも思っています。

奥村さんのSNS
Instagram :@fukui_soba_report

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蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦酒タニスタ兼インスタグラマー

幼少期と学生時代、そして仕事でシンガポール、インド、ミャンマーと渡り歩いた末に帰国。お蕎麦屋さんでいただく“一杯”の魅力に取りつかれ、現在は全国のお蕎麦屋さん巡りをライフワークにする蕎麦屋酒ニスタ。 普段はIT系上場企業にてDXな事業に従事する傍ら、日々、蕎麦屋酒の魅力をSNSを通じて発信中                          InstagramID:sobaya.de.jyokigen

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