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そば創りノ日々

自分の“好き”な蕎麦と蕎麦屋酒の魅力をもっと多くの人に届けたい


“蕎麦”に携わる人々の想いを紡いでいく、【そば色ノ日々】。今回は、蕎麦前と手挽き・十割のお蕎麦に拘りを持つ、石神井公園の蕎麦と酒処きくちの店主でいらっしゃる菊池さんの”想い”を紡いでいきたいと思います。

プロフィール
<菊池さんの略歴>
1991年12月30日生まれ。日本大学法学部を卒業後、バンコクでの語学留学や、一年ほどのどぶろく作りを経て、現在の店舗の前身である【野饗】で修行し、店舗を引き継ぐ形で、【蕎麦と酒処きくち】を開店。お客様へおいしい蕎麦前とお蕎麦を楽しんでもらえるようにと探求の日々。日本とタイのハーフ。

──菊池さん、本日はお忙しい中にも関わらず、お昼の営業後の時間に、こうしてインタビューを受けていただきまして本当にありがとうございます。個人的にも、きくちさんの蕎麦前とお蕎麦の大ファンで、何度も何度も通わせていただいていますが、こうして改めて菊池さんの“想い”を聞けること本当に楽しみにしていました。本日はどうぞよろしくお願いします。

こちらこそ、いつも蕎麦前にたくさん日本酒も愉しんでいただきまして、ありがとうございます。あまり自分のことを話すのは得意の方ではないのですが、ぜひ、少しでも自分の”想い”が読んでくださるみなさまに伝わると嬉しく思っています。よろしくお願いします。

──まず初めに、本日までの経緯をお伺いさせていただきたいのですが、お願いできますでしょうか。

実は自分、あまり知られていないかもしれないのですが、日本とタイのハーフなんですよ。大学で法学部を卒業してから、自分のもう一つのルーツにも触れておきたいと思って、向こうの大学でタイ語を学びに一年ほど通っていました。

向こうでも仕事を実は探していたのですが、なかなか自分のやりたいことと条件があうような仕事が見つからなかった時に、学生時代にバイトを少ししていたうどん屋が、新店を出すので、そこの手伝いに帰ってこないかとのお誘いを受けて、日本に帰国し、一年半ほどそちらのうどん屋で仕事をしていました。

思い返すと、学生のころのバイトも、初めての仕事もずっと飲食をやっていますね。あ、ちなみに学生時代は、このお店の前身の野饗でもバイトをしていました。その時のことについては、また後ほど触れさせていただきますね。

そのうどん屋で働いている傍ら、僕は元来からお酒が大好きなのですが、日本酒を作ってみたいという想いが日に日に強くなっていきまして、そうした条件にあった仕事が出来る場所がどこかにないものかと探していたところ、岩手県の遠野で、どぶろくを、米作りからやっている、そして民宿もやっている、佐々木要太郎さん(@yotaro_sasaki) との出会いがあり、ぜひそちらで働きたいと直談判をして、一年ほど働かせていただけることになりました。

要太郎さんとは、一度吉祥寺で、たまたま呑んだことがある縁もあって、とある日のFacebookの投稿で、働き手募集!を見つけて、すぐに応募しましたね。

遠野での体験はとても良い日々でした。

一年間、稲はすべて自分たちの手で植えて、草取りも、無農薬でやっていたこともあって、夏になると雑草がわさわさと生えていて、それをすべて自分たちの手で抜くのですが、まぁなかなかの重労働でしたね。笑

盆地という場所柄もあって、熱がとてもこもるんですよね。めちゃくちゃ暑かったです。そんな中でも、要太郎さんは、稲を手植えしているときに、かわいいだろう?天使にみえるだろう?と言っていました。僕には、しんどさもあって、とてもじゃないけど天使には見えず、むしろ悪魔に見えていましたね。冗談ですけどね。笑

とおの屋 :http://tonoya-yo.com/

──蕎麦の話になるまでもかなり興味深い話ばかりですね。ちなみに、日本酒造りはいつまでやっていらしたんでしょうか?

元々は5月にスタートして、12月一杯までということで始めたのですが、たまたまなのですが、3月頃にタイからシェフを招いてコラボイベントをやるという話が出ていたこともあって、自分はタイ語が話せますし、そのイベントまで一緒にやろうかということで、3月一杯までお世話になりました。なので、遠野でお世話になっていたのは、大体一年程ですね。

その後、東京に戻って、一か月ほどまたバンコクに行ったりもしていたのですが、もともと蕎麦屋で働きたいという想いもあったこともあり、学生時代にバイトさせてもらっていた、野饗で働かせてもらうことにしたんですよ。

野饗で働きながら、30歳になるころにでも、独立ができたらいいなぁ位でやっていたのですが、とある日、急に野饗は閉めるという話になって、誰かやりたい人がいればという話になったときに、誰も手を上げなくて、勢いで自分がやりたいと言って、引き継ぐ形になりました。

──突然のことで、結構思い切って初めてみるのも勇気が必要だったと思いますが、一気に人生がまた変わっていくきっかけになりました。

そうなんですよね。27歳の時だったのですが、実は野饗の店主からも、最初は大丈夫かなという感じで、少し心配されていたんですよね。でも、思い切って始めることにして今ではとてもいい決断だったなと思っています。

──きくちさんでは、とてもおいしい蕎麦前の逸品料理を毎度楽しませていただいているのですが、料理はどこかで修行されたのでしょうか?

いえ、お蕎麦と天婦羅については野饗で教えてもらってはいましたが、料理は基本的に独学なんですよ。

料亭とか、割烹、また居酒屋でも働いたことは無いんですよね。

バイトや仕事の中で、野菜を切ったり、魚を捌いたりということは経験していましたが、味を決めることはやっていなかったですね。自分でお店を持ってから、家で試行錯誤したり、飲食の知り合いに教えてもらったりですかね。

まぁそんなに難しい料理は作ってないですよ。笑

──いやいや、どれも本当においしくて、いい意味で“変態”だなぁといつも愉しみながら思っています。笑

そういえば、お蕎麦の話に戻りますけど、思い返すと、僕は小学生の頃から実は蕎麦が好きだったんですよね。

田無まで習い事に行っていて、蕎麦屋さんがあったのですが、打ち場が見えるお店で、蕎麦を打ってる姿を眺めながら食べるお蕎麦は、子供ながらにとても好きな時間でしたね。更科のお店だったので、自分が今お出ししているような、蕎麦の香りを愉しむ感じとはまた違うお蕎麦の愉しみ方ですが、綺麗な白色のお蕎麦が大好きだったこと、小さいころの思い出としていまでもとても鮮明に覚えています。

話が少し前後してしまうのですが、学生時代に野饗でバイトしたのも、野饗で食べたお蕎麦が、人生で初めて、蕎麦の香りの魅力を感じられた衝撃的な体験だったからなんですよね。当時は、どこの産地の蕎麦なのか、どのように打たれているのかも全くわかっていなかったですが、蕎麦って、こんなにも香りがするもんなんだ、という感動を初めて知ったのが野饗でした。

野饗で働くようになってから、蕎麦打ちもさせてもらうようになりました。ただ、合格が出るまでには本当に時間がかかりましたね。毎日毎日打って、3か月ほど経ったときにやっとオーケーを出してもらえました。いやぁ時間がかかりましたね。

──蕎麦打ちはみっちり指導を受けられたのでしょうか?

粉の挽き方や打ち方など、色々と教えてもらいました。 自分で打ってみて、出来上がりが全然理想と違うので、その差分はどこから来るのか、あーでもない、こーでもないと思考錯誤の日々でしたね。たまにどうしてもわからない時にだけ、質問をして、教えてもらって、それをまた試してみて、ということを3か月間毎日続けていました。

──菊池さんのお蕎麦屋さんとしての拘りはありますか?

一つはやっぱ、蕎麦屋で呑んでくれるお客さんが、入ってきやすいお店作りを意識していますね。自分自身がお酒好きということもありますが、お蕎麦屋さんってやっぱ蕎麦前も愉しむところだと思うんですよね。お酒も楽しむところ。だからこそ、うどん屋じゃなくて、蕎麦屋なんですよね。

あとは、一人でお店をやっていることもあるので、お客さんの回転数を上げるのではなくて、一人ひとりのお客さんに真摯に向き合って、1時間といわず、2時間でも、ゆったりとした時間を愉しんでもらえると、やっぱ嬉しいですよね。

お店のメニューも、大皿でバーンとだすというものよりも、ちびちびと、時間をかけてまったりと愉しめる品々を意識してお出しさせていただいています。

≪蕎麦前≫

──僕は特に、きくちさんに来ると、練り牡蠣にやられてしまってます。

あれはやばいですよね。いくらでも日本酒がいけてしまいますよね。笑

お酒に関しては、もともとは日本酒が好きです。まだまだお蕎麦屋さんでワインを頼まれる方はもちろん少ないですが、常連さんの中にはワインを楽しみに、来てくれる方もちらほら最近はいらっしゃってくれていて、嬉しいです。

こと日本酒については、基本は純米酒にしています。燗につけておいしい、お米の旨味をしっかりと感じられる、そんな日本酒を選んで、お出しさせていただいています。

ちびちびと蕎麦前の時間を愉しんでもらえるような日本酒をそろえるようにいつもしています。ぜひ、このインタビューを読んでくださっているみなさんも、蕎麦前の時間を楽しみにいらしていただけたら、本当に嬉しく思います。

≪日本酒≫

──今後やっていきたいことはありますか?

コロナも落ち着いてきたので、全国の生産者さんを回りたいと思っています。このお店は2020年にオープンしているのですが、すぐにコロナ渦になってしまい、いろいろと回り、いろんな方々と触れ合いたいと思っていても、断念していたんですよね。

最近は、北海道や、宮崎、佐賀、京都といった全国のお蕎麦屋さんもお店にきてくれる機会も増えてきているのですが、今度は自分が各地をまわれたらと思っています。

自分自身や、お店をもっと有名にさせたいとかっていう想いは、正直あまり無いんですよね。単純に、お蕎麦の文化、そして蕎麦前の文化と魅力が、もっともっと多くの人に広まっていくと嬉しいですね。

蕎麦会を定期的にやってるのですが、そうした想いが背景にはあるんですよね。 蕎麦の味と香りをしっかりとたのしめる、まるで蕎麦の実を直接かじっているような、そんなお蕎麦をもっともっと広く知ってもらえたら嬉しいですよね。

先日も、そば色の日々さんが蕎麦会をこのお店で開いてくださいましたが、そうした、お蕎麦の魅力を広めていける、そんな交流の場を広げていきたいと思っています。 <きくちさんで開催したそば色ノ日々蕎麦屋酒を楽しむ会

ぜひ、おいしい蕎麦屋酒を楽しみに、いらしてくださいね。

<最後に、菊池さんにとっての“そば色”は?>

【“緑と白が混ざったような色”ですね。】

美味しい蕎麦って、個人的には透明な部分と緑がまざっていて、斑点があるのが好みなんですよね。なので、自分にとってのそば色は、おいしそうな蕎麦の色で、緑と白が混ざったような色ですね。

蕎麦と酒処きくちさんのSNS
Instagram :@sobasake.kikuchi

店舗情報
店名:蕎麦と酒処きくち
住所:〒177-0041 東京都練馬区石神井町3丁目27−16
TEL:03-6913-1840
営業時間:
[月・火・水・土・日]12:00~14:00、18:00~21:00
[金]18:00~21:00
定休日:木曜日

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蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦酒タニスタ兼インスタグラマー

幼少期と学生時代、そして仕事でシンガポール、インド、ミャンマーと渡り歩いた末に帰国。お蕎麦屋さんでいただく“一杯”の魅力に取りつかれ、現在は全国のお蕎麦屋さん巡りをライフワークにする蕎麦屋酒ニスタ。 普段はIT系上場企業にてDXな事業に従事する傍ら、日々、蕎麦屋酒の魅力をSNSを通じて発信中                          InstagramID:sobaya.de.jyokigen

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