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そば創りノ日々

さまざまなキャリア・経験を積んで、ひとが集まる理想の蕎麦屋を開店


“蕎麦”に携わる人々の想いを紡いでいく、【そば色ノ日々】。今回は、様々なキャリアと経験を積んだのちに、人があつまる地域コミュニティとなる、理想の蕎麦屋を、地元長野で営まれている、さわの庵店主の大口さんの”想い”を紡いでいきたいと思います。

プロフィール
大口 雅樹さん略歴>
昭和53年11月20日木島平生まれ。
高校生から始めたお蕎麦屋さんでのバイトから、東京杉並区の老舗【本むら庵】での修行後、飲食やそれ以外の様々なキャリアを積んだ後に、長野市内で2020年7月【さわの庵】を開店。地元木島平の蕎麦粉に拘りを持ち、日々、より多くの人に蕎麦の魅力を知ってもらえるよう活動中。

──大口さん、本日はお忙しい中にも関わらず、こうしてインタビューのお時間をいただきまして本当にありがとうございました。
先日、お店にお邪魔させていただき、あまりの居心地の良さと美味しさに一気にファンとなり、こうしてお話をお伺いさせていただけること嬉しく思っています。本日はよろしくお願いします。

こちらこそ、先日はありがとうございました。蕎麦前とお蕎麦を愉しんでいただけて嬉しいです。また、こうしてインタビューまでしていただけて、ありがとうございます。

──早速なのですが、大口さんがお蕎麦の道に入ったきっかけを教えていただけますでしょうか?

私は長野県の木島平というところで生まれて、高校を卒業するまでずっと木島平だったのですが、高校2年生のころにバイトを探していたところ、たまたまお蕎麦屋さんで仕事が見つかり、そこで働き始めたのが、お蕎麦との最初の出会いになりますね。

元々はラーメン屋さんでのバイトだったのですが、そこの店長が、お蕎麦屋さんを新たに開くということで、そこでバイトしないかとの誘いで、お蕎麦屋さんで働く流れとなりました。

飯山市にある、江戸手打ち蕎麦の【しおいり】というお店で今も営業されていますね。

その後、高校卒業のタイミングで就職先を探していたら、【しおいり】の店主の蕎麦の修行先であった、東京杉並にある【本むら庵】さんに口を聞いていただき、そこで修行させていただくことになりました。

──ご縁があって若い時から一気にお蕎麦の道が開けていったのですね。

そうなんですよね。元々高校に入るまで、乾麺でお蕎麦を食べたことはありましたが、生麺を食べたことは、バイトに入ってからが初めてでした。長野といったら、お蕎麦!というイメージがあるかもしれないですが、意外とお蕎麦が私の身近には無かったですね。

【しおいり】さんでは結局高校卒業まで2年間ずっとほぼ毎日入っていたこともあり、蕎麦が本当に生活の一部になっていきましたし、お蕎麦の魅力にハマっていきました。【しおいり】さんで打たれるお蕎麦も毎日違っていたことに奥深さを感じたり、仕事に対する姿勢をたくさん教えていただき、感謝しかないですね。

──その後本むら庵さんで修行をされていくことになったとのことですが、その時のことを少し教えていただけますでしょうか。

入りたてのころは、雑用がメインでしたね。先輩たちがしてほしいことを、先回りしてやることを毎日していました。

一年間そうした下積みをして、次の世代が入ってくると、いよいよ蕎麦打ちの練習を始めさせてもらえるようになりました。そして、そうした練習の中で、お蕎麦も認めてもらえるようになると、初めてそのお蕎麦をお客様にもお出ししてもらえるようになっていくんです。

──蕎麦打ちについては手取り足取り教えてもらえるものなのでしょうか?

蕎麦打ちの基本的な動作については教えてもらえるのですが、あとは独自に練習を重ねていきます。

六本木支店にいらした先輩の打つお蕎麦が本当においしくて、その人の蕎麦に如何に近づき、そして超えていけるかということを日々意識して、蕎麦打ちに励んでいました。

そうした日々の中で、自分らしい蕎麦打ちが徐々にできるようになっていきました。私の場合、こねる時は水分少な目に少し固め、そしてしっかりと粘りを出すこと、そして蕎麦を延す際には、生地の中の空気をしっかりと抜くことを意識しています。そうすることで、歯切れの良い、飽きのこない、もっともっと食べたいと思えるようなお蕎麦を日々目指しています。

本むら庵での7年間の修行で、そうしたお蕎麦が打てるようになっていきました。

──その後、独立し、さわの庵を開かれるのでしょうか?

本むら庵での修行後は、実はその後は結構蕎麦から離れて様々な職を点々とすることになったんです。

実は私は若いときに子供も授かっていて、上の子が保育園に上がるタイミングで、東京ではなく、田舎で育ててあげたいということで、飯山市の奥の方に引っ越すことにしたんです。

当然田舎の奥地なので、お蕎麦屋さんでの働き口は残念ながらなく、一度お蕎麦にこだわらず、飲食店で働こうということで、和食屋さんや、ファミリーレストラン、ラーメン居酒屋や、イタリアンレストランの開店に携わらせてもらったり、ラーメンチェーン【幸楽苑】の店長などなど幅広くお仕事をさせていただきました。飲食以外でも、生命保険の営業をやったり、日帰り温泉施設のオープニングもやったりとしました。

こうした幅広い経験が今の【さわの庵】に活きていると感じています。

──たしかに、さわの庵さんのメニューは本当に料理が多彩ですよね。

そうなんですよね。蕎麦から離れたことで、広く料理を学ぶことができて、今のお店のメニューの幅にも繋がっているし、私のモットーとして、まずはなによりも、楽しく、食事をとってもらいたいと思っていて、メニューが限られていると、例えばお子さんが愉しめなかったりしてもさみしいと想い、老若男女みんなが愉しめるお店作りに繋がっていると感じています。

お蕎麦屋さんだけにいると、いまやってるメニューも、蕎麦屋としては邪道だ!という考えに至ってしまい、出来てなかったかもしれないなと思います。

──蕎麦前やお蕎麦でこだわっていることを教えていただけますでしょうか。

海老の天婦羅にはとてもこだわっています。ぷりぷりっとした食感をぜひ愉しんでもらいたいですね。

また、お蕎麦に関しては、地元の木島平産の蕎麦粉に拘りを持っています。特にブランドがついているわけではないのですが、地元の方で休んでいる畑がたくさんあって、その休眠の地をなんとか有効活用したいということで、ここ10年ほど蕎麦作りに取り組まれているのですが、地元を応援したい意味でも、今後も木島平さんの蕎麦粉を盛り上げていきたいと思っています。

──さわの庵を開かれて3年ほどだと思いますが、この3年間を振り返ってみていかがでしょうか?

やっと地域に溶け込んでこれたかなと思っています。開店当初から、敷居の高くない、人と人とが繋がれる、地域の人から愛されるお店を作りたいと思っていました。

最近では、地元のみなさんの口コミで足を運んでくれるお客さんも増えてきていて、目指していたコミュニティに溶け込んだお蕎麦屋さんになってきていることを実感できるようになってきました。

お客さんにもフレンドリーに接することを心がけていて、自分の実家に帰ってきたような、アットホームなお店にしていきたいと思っています。

──先日お伺いした時も、お客さん同士の距離もちかくて、とても素敵な、アットホームな雰囲気だなと感じていました。ついつい居心地が良すぎて長居してしまいました。笑
最後に、今後の展望についてお伺いできますでしょうか。

将来は、さわの庵を残しつつ、お蕎麦と天婦羅だけにこだわったお店を出したいと思っています。天婦羅を揚げる音と、蕎麦を打っている、切っている、ゆでている音しかしない、そんな職人としてこだわりぬいたお店もやっていきたいと思っています。

蕎麦屋の天婦羅って、天婦羅専門店のものとは違うんですよね。衣をあつぼったく、しっかりとつけているんですよね。衣のしっかりとついた天婦羅を、温かいお蕎麦にのせると、徐々に汁に染み出して、相乗効果で本当においしくなるんですよね。

そして、天婦羅を通じて四季を感じられる、そうしたお店を今後具体的にしていきたいなと思っています。

また、いい意味でお蕎麦屋さんって“変態”だと私も思っていて、そうした職人が作る蕎麦前をぜひ多くの人に愉しんでもらえるようにしていきたいと思います。日本酒も、地酒だけではなく、全国のものを取り扱っているのも、広く良いものを、多くの人にしってもらいたいという気持ちからなんです。

あとは何よりも蕎麦文化をもっともっと広めていきたいと思っています。その為にも、蕎麦に携わる多くの人と知り合い、そしてコラボしていく、そんな動きも今後は取っていきたいと考えています。

一人ではできることがどうしても限られてしまいますが、チームになることで発信力が高まっていきますよね。しがらみの無い、横と縦をつないで、点を広い面に広めていきたいと考えています。

“そば色ノ日々”さんを通じても多くの蕎麦人と繋がっていきたいですし、ぜひ、イベント等もご一緒させてくださいね。

<最後に、大口さんにとっての“そば色”とは?>

【“七色”ですね。】

お蕎麦って、こういうものだと決めつけるようなものではなく、いろんな蕎麦を愉しめることが魅力だと思っています。

打つ人によっても、気候によっても、変化する。その時その時の蕎麦を楽しめたらいいなと思っています。

天ぷらと手打ちそば さわの庵さんのSNS
Instagram:@sawanoan

店舗情報
店名:さわの庵
住所:〒380-0826 長野県長野市北石堂町1190
TEL:026-219-3014
営業時間:
[火~金]11:00~14:30、17:30~22:00(L.O.21:30)
[土]  11:00~15:00、17:30~22:00(L.O.21:30)
[日]  11:00~15:00、17:30~20:00(L.O.19:30)
定休日:月曜日

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蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦酒タニスタ兼インスタグラマー

幼少期と学生時代、そして仕事でシンガポール、インド、ミャンマーと渡り歩いた末に帰国。お蕎麦屋さんでいただく“一杯”の魅力に取りつかれ、現在は全国のお蕎麦屋さん巡りをライフワークにする蕎麦屋酒ニスタ。 普段はIT系上場企業にてDXな事業に従事する傍ら、日々、蕎麦屋酒の魅力をSNSを通じて発信中                          InstagramID:sobaya.de.jyokigen

  1. 自分自身が真に納得する拘りでお客様に喜んでもらいたい

  2. 人に喜んでもらえる“蕎麦打ち”の魅力と感動を多くの人に広めたい

  3. 夫婦二人三脚で理想のお酒を愉しむお蕎麦屋さん創り

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