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そば創りノ日々

地元に根差した父のお店を継承し、お蕎麦を通じた新たな村づくり


“蕎麦”に携わる人々の想いを紡いでいく、【そば色ノ日々】。今回は、お父様から受け継いだ地元のみなさまに愛されてきたお店を、県外の多くの人にも楽しんでもらえるお店にしたいとの想いのもと、蕎麦懐石の専門店としてリニューアルをした、さくら荘 店主の内野 康昭さんの、お蕎麦にかける“想い”を紡いでいきたいとおもいます。

プロフィール
内野 康昭さんの略歴>
1983年5月8日埼玉県鶴ヶ島市生まれ。大学ではインド哲学を学ぶ。卒業後は和食、イタリアン、深夜ダイニング、フレンチ、蕎麦屋など一貫して飲食店で多様な経験を積む。その後、31歳で、父の店を継承し、蕎麦懐石の専門店としてリニューアル。さくら荘店主。

──内野さん、本日はお忙しい中にも関わらず、インタビューのお時間を頂きましてありがとうございます。先日もお店にお邪魔させていただき、本当に酔い時間をありがとうございました。色々とお話をお伺いできること、とても楽しみにしていました。よろしくお願いします。

こちらこそ、先日は愉しんでいただき、嬉しかったです。よろしくお願いします。

──早速なのですが、内野さんがこの地で蕎麦懐石のお店を始めるに至った経緯について教えていただけますでしょうか。

元々私はインド哲学を大学で学んでいたのですが、その道での仕事はなかなか見つけるのは難しいこともあって、父がやってきた“さくら荘”で生まれ育ったこともあり、自然と飲食の道に進もうと考えるようになりましたね。

ちなみに、この“さくら荘”は、元々父が駅前でイワシ料理の専門居酒屋をやっていた際に、地元の人が集まれるコミュニティスペースが無いことに気づき、思い切って自分で“宴会場”を始めてみようと立ち上がったのがはじまりなんですよね。

そんな飲食業の息子として生まれた背景もあって、結果として様々な業態の飲食店で勉強させていただき、今に至ることになりました。

大学を出てから最初の3、4年は、和食はもちろん、イタリアン、フレンチ、深夜ダイニングと広く学んだ後に、蕎麦を学びたいと思い、茶懐石で有名だった目白の茶懐石【和幸】に飛び込んでみたのですが、実はもう蕎麦懐石はやっていなくて(笑)結果として本懐石をしっかりと学ばせていただきました。3年間も結果としてお世話になりましたね。

その後、後輩や、兄弟子が知っていた、立川にある蕎麦懐石の【無庵】にお世話になることになりました。

無庵では4年間仕事をさせて貰いました。

そして、31歳になって、地元に戻ってきたときに、父も蕎麦好きなこともあって、ここ“さくら荘”で宴会料理の一品として蕎麦は出していたんですね。ただ、乾麺を使っていたということと、年々、“宴会”の件数が減っていく姿を見ていて、自分自身“蕎麦”で勝負したいという強い思いもあったので、ここは一念発起して、“蕎麦懐石”のお店としてリニューアルさせていただきました。

8年経った今でもこうして続けられていることは、多くのお客さんに支えられてのことと思い、とても嬉しく思っています。

──蕎麦懐石にリニューアルして、変化はありましたか?

はい、元々宴会だけをやっていた時は、お客さん一人当たり2,000-3,000円程でやってきたのですが、蕎麦懐石としての付加価値をしっかりと打ち出して今の値段でお客様に満足していただけるようになりました。

また、お客様の層も完全にこの8年間で入れ替わってきているとおもいます。元々は地元の皆さんが集まれる場としての“さくら荘”でしたが、コロナ禍になって宴会として使われることが完全にストップしたこともあり、お店の雰囲気、そして料理の質をたのしんでいただけるお客様にいまでは足を運んでいただいています。

──地元のお客様以外にも多く来ていただけているのですね。

はい、県外からも、Google Mapを見て来ていただくお客様が多いですね。

鶴ヶ島は圏央道と関越道がぶつかる位置にあることもあって、東京から郊外に出られる方のお昼の時間に丁度ぶつかることもあり、たまたまお店を見つけてもらえているみたいです。

このお店を直接検索をしているわけではないのですが、そうして偶然にも、見つけて頂き、愉しんでいただけるのは、嬉しいコトです。

また、大企業のお偉い方々もお店に足を運んでいただけていまして、ご紹介の輪も広げていただけていて、感謝しかないです。

──みなさんさくら荘のお蕎麦のファンになられているのですね。お蕎麦について、拘られている点は有りますでしょうか?

一番はやはり蕎麦の製粉、配合ですね。そして、今はお蕎麦は二種類のみですが、せいろと挽きぐるみでは、かなり表情を変えることを意識しています。

せいろはさらっとした食感で、香りが分かる、白っぽいお蕎麦を意識して打っています。

一方で挽きぐるみは、ぎりぎりまで粒を粗くして、ぼこぼことしながらも、透明感のあるお蕎麦を打てるように意識しています。

また、蕎麦懐石と言いながらも、古典的な蕎麦前だけに拘るのではなく、自分自身もイノベーティブな新しいレストランも、古くからやっている和食の老舗も好きで巡るので、様々なスタイルで、お客様に蕎麦前を愉しんでいただくことを意識しています。

食材については、県内のものを出来るだけ使って、地産地消を意識しています。地元のものに拘って、ここでしか味わえないものをお客様に愉しんでもらおうと思っています。

畑も今後は少しやって行きたいと思っていますし、竹の子やわらびは近くで取れるのでそれを使っていますが、自分で育てるところまで拘ってやっていきたいですね。そうすることで、都内では味わえない、そんな新たな体験を価値としてどんどん生んで行きたいと思っています。

自分は多分飽き性ということもあって、新しいことを常に挑戦していたいんですよね。同じ料理ばかり作ってもいられないですし、高級食材を使うでもなく、材料主義で良いものを常にアップデートしてお客様に提供していきたいと思っています。

──さくら荘さんではお酒にも拘りがあるように感じています。

はい、お酒はずっと好きなのですが、鶴ヶ島に帰ってきてからさらに日本酒とワインの勉強をするようになりました。自分のお店で出すものだからこそ、だれよりも自分が語れるようにならないと、と想い、勉強し始めたら、更にはまっていくというループに入っています。笑

──最後になりますが、今後の展望があればぜひ教えて頂けますでしょうか。

大きなことをいってしまうと、鶴ヶ島の地にもっと多くの人が来てくれるような、そんな仕掛けを作っていきたいと思っています。さくら荘に来てもらいたいというコトだけではなく、この農村地帯の同世代の農家のみんなと、村づくりをしていきたいんです。

例えばですが、今でもイチゴ摘みは人気ですが、観光農園をもっと広めていったり、今は生産量も限られることもあって地元だけで使われている在来種の蕎麦を全国に広めていったりと、面白い人たちがこの地に集まってくる、そんな場所にしていきたいと思います。

と、いうのも、何よりも呑み友達が欲しいというのが一番なのかもしれません。 ぜひ今度一緒に呑みに行きましょう。笑

<では、最後に内野さんにとっての“そば色”は?>

【“綿の色かな”】

まだ何色にも染められていない、真っ白ではない、あくまでも自然の色。そこから何色にも魅力を染め上げていける、お蕎麦はキャンバスかなと思っています。

さくら荘さんのSNS
HP:https://sakura-soh.com/
Instagram:@sobakaisekisakuraso

店舗情報
店名:さくら荘
住所:〒350-2214 埼玉県鶴ヶ島市太田ヶ谷128-8
TEL:049-285-1862
営業時間:11:30 〜 15:00 (L.O. 14:00)
     17:30 〜 22:00 (L.O. 20:00)
定休日:毎週水曜日 / 第二、第四火曜日

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蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦屋 de 上機嫌

蕎麦酒タニスタ兼インスタグラマー

幼少期と学生時代、そして仕事でシンガポール、インド、ミャンマーと渡り歩いた末に帰国。お蕎麦屋さんでいただく“一杯”の魅力に取りつかれ、現在は全国のお蕎麦屋さん巡りをライフワークにする蕎麦屋酒ニスタ。 普段はIT系上場企業にてDXな事業に従事する傍ら、日々、蕎麦屋酒の魅力をSNSを通じて発信中                          InstagramID:sobaya.de.jyokigen

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